深見先生、ありがとうございました〜

はっきりしない季節が続き、疲れた体にムチ打たれてる中高年のみなさま、10月ですよ、もう。



いつもならば、早々にコタツ登場の時期ですが、夏に戻りたいのか秋に入りたいのかハッキリしてもらえないため、コタツ布団も行き場をなくしてます。こっちもどんな格好したらいいもんかわからず、更年期もいよいよ本番か?という年頃ゆえ、下は冷やしてはまずかろうと思い、秋冬用の裏の着いたスゥエット?というのかジャージというのか(わからんのでジャージとします)そんな代物をはき、上は半袖ポロシャツ風な物を着て仕事に勤しんでおります。

しかしこのジャージ風ズボンがまた、なんというか−若者仕様のモノなんでしょうね。足首にゴムが入っていてすぼんでいるため、「風が入らなくていいな」と思い買ったのに、はいた姿がモンペそのもの。色も今流行りのカーキ色?渋いグリーン?なハズが、昔なつかしい国防色に見えてしまうんですな、自分がはくと。

そんでまた上半身も最近貧相。ハラにばかり肉がつき、首から胸に向かい肉がゲッソリ落ちており、化粧気もなく、パーマもあててなく、眉毛もナチュラル。最近のテレビドラマや映画の中の戦時中の女性を演じておられる女優さんたちより、リアルに戦時中女性のビジュアルを再現してると思われます。

そこでなにをして戦時中になってしまうのか考えてみたんですが、顔がデカイことじゃないかと。 等身と体型が昭和なんだな。

もっと言うと、ファッションセンスもゼロなんですね、自分。まず、あんまりオシャレに興味がない。これはイカンです。仮にも女性誌でマンガ描いてるのにね。まあ、「おかめ」ですが。



そう、それで先日もこんなことがありまして−。


10月に「おかめ」12巻が発売するにあたり、久々に本誌の表紙を描くお仕事をいただいたのですが− テーマ「ハロウィン」。編集の方が描いたラフには、ハロウィン仕様なカンジの衣装を着たおかめ一家と「みみっく」ヒロインのみみちゃんが「今日はパーティーよ!」といった風に楽しそうに踊っている…。見るなり口をついて出たのは、



「これは厳しいですね…」



の一言。ハロウィンと「おかめ」て。どーなんだろう。見たいだろうか、みんな。

しかし、表紙は雑誌の顔。ありがたいお仕事に間違いないので、一筆入魂でがんばることにする。

まずはハロウィンを調べる。あまりの興味の無さにハロウィンがなんたるかぼんやりとしか知らない。 なんとなく調べ、次にみんながどんな服を着たりしてるのか調べる。

…ますますわからない。子供らはなんとかなるとして、ヤスコさんと先生はいったいどうしたら?

もう一回ラフを見ると、ヤスコさんは魔法使いのおばあさん風に見える。このラフの絵は描き手である編集さんの遠慮が、ヤスコさんを可愛らしく表現しているので、無理なく見える。しかし問題はこれを自分が描いて可愛くなるか?ということ。しかも先生にいたっては、コウモリになって飛んできてほしいらしい。大丈夫だろうか?自分が描いて。

不安爆発で担当のMさんに電話で相談する。

「なんだか、わからないんですよ…何を描けばいいのか」

沈み込む声。

Mさん明るく「そーですね〜、うーん。『おかめ』とハロウィンてのがね〜」

やはりそう思うらしい。そこで、不安な点を一つ一つ片付けていくこととなる。

Mさん「まず、じゃあ先生をコウモリにするのはやめますか?」

自分「いいですかね?やめて」

Mさん「いいと思いますよ。かっこよくしましょう、ドラキュラ風に。せっかく本誌でもラブい展開になってきたとこだし」

なるほど。ドラキュラならなんとなく描けそうかも−。しかし最大の問題は−

Mさん「ヤスコさんですよね…」

自分「ハイ」

悩むことしばし。そこでMさんの助け船。

Mさん「深見先生の『みみっく』のイラストはもう出来てるみたいですよ。参考までに見せてもらいましょうか?」

それはありがたい!

自分「いいんでしょうか?そんな大事なモノを」

Mさん「や、コピーですけど…。じゃお送りしますね」



ここまで読んだだけでも、みなさまおわかりでしょう。いかに自分がオシャレや流行り行事に興味がないことを。そして深見じゅん先生の聡明なることを。 ホントに尊敬する先輩のお一人、深見先生。仕事は速いし、マンガは面白く、とても読みやすい。それでいて内容も奥深く、たくさんの読者さんから愛されている。 自分もあーなれたらなあ〜と憧れる先輩です。



早速イラストのコピー到着。 かわいい。ほうきにまたがるみみちゃんはまさにハロウィンのヒロイン。(ヘンか、この表現)

自分「かーわーい〜」

Mさん「ねえ!いいですよねーこの衣装も」

自分「しかも早い…深見先生の方がページ数も多いのに…」

Mさん「早いんですよ〜深見先生、お仕事あげるの」

いろんな意味で反省しつつ、思いきって言ってみた。

自分「これ、あのぉ〜 マネしちゃダメですかね?衣装」



モノを創作する人間が、こんなことを言ってはいけないのは痛いほどわかっている。わかっちゃいるが−。専門外のことはわからない。

連日のあまりに所帯じみた生活と、元来fancyな夢を見ないで成長してしまった泥くさき性分ゆえ、BL系の妄想は大好きだが、fancy系はホントに描けない。好きだけど描けないのです。そこで、若き頑固な頃なら口が裂けてもいいたくなかったセリフが、いとも簡単に出たわけです。だって、もうわかってるから、自分という人間が−。

そしたら、こちらもいとも簡単にMさん、

「あ、いいんじゃないですかー?お揃いとか可愛いかも」

自分「そーですよね?!かわいいですよね?!」

この際、かわいくなくてもマネさせていただければ、自分的にはOKであった。そして話はポンポンと進み、Mさん→深見先生担当Rさんを経て深見先生から実に気さくにお許しをいただき、マネさせていただくこと決定。この際、てっちゃんとゆうちゃんの帽子、マント、ブーツも一揃い、マネさせていただくことにする。



しかし、ここで重大なことに思いあたる。自分はこう見えてすごい人見知りおばさんなので、年一の漫画家パーティーにもほとんど出ず、漫画家さんの友達は現在ほぼいない。たまに連絡くれるのも「うえけん」こと上野顕太郎さんぐらいか? そんなですから もちろん深見先生とも面識はないのですが、今までビーラブの表紙で何度かコラボさせていただいているのです。

第一回目の時に

「どーしよう…やはり新参者として、ここはご挨拶するべきでは?」

と思い、担当さんに相談したところ、

「いやあ、しかし、これは編集部が依頼してる仕事ですから、作家さんたちがそんなに気を使われなくても大丈夫ですよ。深見先生もお優しいし」

え?そーなんすか?と スルーしてしまっていたのです。

しかし今回は、ご一緒させていただくだけでなく、図々しくもマネさせていただくワケで…(なんか倉本聡脚本口調)。勇気を出し、恥を忍んで深見先生に、お手紙を書くことにした自分。 出来た手紙は封もせずMさんに渡す。なにしろ手紙の書き方など、なってないことこの上ないので、ご挨拶のつもりが失礼にあたってはモトもこもない。

「失礼がないかどうか検索してほしいんですが」

とMさんに言うも、

「大丈夫ですよ〜」と、そのまま深見先生の担当Rさんに渡してくださった様子。渡してもらえた安心感からそのまま一週間ほど忘れていたのですが−。

10日ほどたったところでしょうか、

「深見先生がお返事くださいましたよ〜」

とMさんから連絡が。

「え〜 そ、そんなもったいない!私はどうしたら?!」

お忙しいところに逆に気を遣わせて迷惑をかけてしまった〜! うろたえる自分。



間もなく、刷りだしなどといっしょに深見先生からのお手紙が届く。

力みのない 優しい、読みやすい字が、「入江様」とあり、それだけでお人柄がわかるような、もったいないような。内容もこちらを気づかってくださり、お優しい言葉で書かれており−。

実に実に救われた自分であります。あまりの感動ともったいなさに、

「御礼のお手紙を書いた方がいいですかね?!」

とMさんに詰め寄るも、

「いやあ〜 そしたらまた深見先生がお返事くださったりして文通になっちゃいますよ」

と諭される。確かに。

「じゃあ、じゃあ、くれぐれも深見先生に、ありがとうございました!とお伝えくださいって…」

Mさん「ハイ、Rさんに伝えておきますね」

というわけで我慢することにしました。

そうして1ヶ月たち、発売日、前日。一足早く届いた本誌の表紙を心待ちにして見ると−。



「…同じ服に見えない…」


そう、みみちゃんの服はあいからずかわいらしく、ちょっと高級なカンジがする。それに引き換え

「ねぇ、ヤスコさんの衣装、ディスカウントショップで¥980ぐらいで買った服に見えない?」

娘「あー…」

いかにもといった顔。

しかも生地がジャージっていうか、ストレッチ素材に見える。やはり、センスのない人間が描くと、マネさせてもらったハズでもこういった結果になるらしい。このていたらく、深見先生になんと言ったら…。手紙まで送りつけておいてこれって?! やはり もう一回手紙で謝罪すべきか今まさに悩み中の自分です。









最後に ダンナ近況。

猿の惑星・創世期」に予測通りいたく感動。 もう一回映画館に行く予定だそーな。

自分、宣言されました。



「猿に萌えるぞ」