なんかガス欠状態です…

度々、間があいてしまい申し訳ございません。

なんだか今更ですが、何を書いたらいいのかわからなくて、「うーむ」と唸っております。



震災直後は、あまりにバタバタしていて、「なんとか立ち直らなくては!原稿あげなくては!」と、今にして思えば異常なハイテンション、しばらくして徐々に落ち着いてきた時には、「暗いこと言ってちゃダメ!前向き、前向き」と日頃のネガティブの逆を行く勢いで前進してた気がするのですが−。



早くも2ヶ月がすぎ、しかし未だ苦しみの渦中におられる被災地の方々の様子や、原発問題、ショックであれからずっと気持ち的に立ち直れない人がたくさんいる話等(だってやっぱり怖いことが多すぎですよね)を見聞きしていると、やっぱり何を言ったらいいのかわからないのです。もちろん自分の仕事、やれることを頑張るのは大前提だと思うのですが、それにしても無力だなーと日々思い知らされております。




イカンですね、元気を出さないと。

私ごとき小物、影響力も皆無のオバ漫画描きが、なんか出来ることはないのかなー。

「とりあえず漫画描いとけや」

という ツッコミが聞こえてきそうですが。



そんなエネルギー切れの疲れによる落ち込みから浮上できない自分につい最近ありがたい出来事がありました。

友達の一人に、実家が気仙沼にある、というYさんがいるのですが、秋になるとYさんの実家から送られてくる新鮮な秋刀魚のおすそ分けをいただいたりなんかして、日頃お世話になっている近所の友人です。
しかし、気仙沼と言えば今回最も酷い被害を受けた町の一カ所。心配ではあるものの、へんに気を使ってしまいなかなか電話できず、地震から一週間ぐらいたったところでようやく連絡してみました。

どうやら彼女のご実家は無事だったようで、一安心。しかし親戚やお姉さんの家が大きな被害にあわれたようで、やはり想像を絶する大変さが伺いとれ、それ以上の話は出来ませんでした。

何かさせていただきたいけど、何をしていいのかわからないまま、GW進行に追われてるうちに連休目前に。



ここで再びYさんに連絡してみると−

「今、次女の剣道の試合に来てるのー」と、思いがけず元気な様子。

「ごめんねー、そんなトコに電話しちゃってー」といいながら、つい近況を聞いたりなんかして。



聞けば、彼女はあれから何回が物資を積んで、自家用車で故郷に行ってきたそう。しかし行く度に、変わり果てた故郷や、疲れ果てているみんなを目の当たりにして、こちらに帰ってくると激しく落ち込んでいたとの由。こういう時に出てくる言葉って、ほんとに、無いです。「そっか…そーだよね」などと冴えない言葉をつなげていると、「でもね、だんだん開き直ってきてるよ、みんなも」と 明るく話してくれるYさん(エライ)。

そして 「姉の家が接骨院やってて、やっぱりめちゃくちゃになっちゃったんだけど、明日からまた開業するの」と。お姉さんのお宅はやはり酷い被害にあわれたそうなのですが、自宅より診療所を優先して治されたそうで、この度めでたく開業となるそうなのです。素晴らしい。体の痛い人がたくさんいるでしょうからホントによかったです。



「そーだ、それでね」 と、意外な言葉が。

「新井さん(ワタクシの本名)のウチ、いらない漫画の全巻モノとかない?」

「え、なんでなんで?」

「姉のトコロ、前は待合室にマンガがいっぱい置いてあったの、全巻モノとか集めてて。でも今回、全部ダメになっちゃって」



そして お姉さんの住む町からは本屋さんが一件もなくなってしまったのだそうで、「ウチも今ある『王家の紋章』とか送ってあげようかなあと、思ってるんだけどね、新井さんトコ、ご商売ガラ、もしかしていらないのもあるかなあと思って」

あったんです。震災前までは。娘が買った最近のマンガや、ダンナが昔買ったメジャー漫画の全巻モノなんかも。しかし、今回 我が家もかなりやられ、なにしろ資料を始め、本が多すぎるのにも程があるだろうということになり、片付けの際、思い切って 大量に処分したばかりだったんです。

後に残るは、マニアックな、そーいってはナンですが、接骨院の待合室にはどちらかと言えば不向きか?という手合いのものか、私の愛するBL本ばかり…。日頃 腐っていたのが こんなトコロにも影響するとは…。



「そんな状況でごめんね〜、ちょうど今なんにもなくなっちゃって…」

もう少し早く聞いておけば… と悔やまれてならず、なんかなかったっけと今ある中で考えたトコロ あ、自分のならある、新品のが何冊か−。とは思ったものの、それとて一般受けするかと 言われれば、 いや〜どうよ?といったシロモノ。なんで、もっと売れる、多くの人に届くマンガを描いてこなかったのか、自分、とここでも悔やまれる。 しばしの沈黙の後、思い切って口を開いてみました。

「…あの、私の描いたのならあるっちゃあるんだけど…」

「え、いいの?」

いいの?と聞きたいのはこっちです。

「や、そんなのしかなくて…」

「えー、ありがとう!喜ぶよ、きっと」

ありがたいですね、こんな風に言ってもらえるとは。こちらと言えば、申し訳ない気持ちでいっぱいで、とりあえず、Yさんも読んでいてくれる「おかめ」はまとめて10巻もらっていただくことになったのですが、「悪いから『のんちゃん』もつけようかな、いや私のマンガばっかりそんなにあってもしょうがないし…」と葛藤は続く。



在庫があると言えば、ダンナのマンガは?いや〜、私の以上に待合室に不向きかも…とも思いましたが、それ以上にダンナの考え方がどーだか…。ダンナも人並みに(?)というか、ひどく今回の地震被害には心痛めている様子に見えますが、なにしろ、人と何かするのが大っ嫌いなタイプ。やるなら自分一人で周囲に告げずにやる、という考えの持ち主なので、「一緒にやらない?」と誘ったところで、どーかなあ− と思いつつ 一応言ってみる。すると思いの他、二ツ返事で「うん」ということになり、ダンナ単行本を取りに仕事場へ。「ほ〜」と思っていると、間もなく単行本を手に戻ってきました。



ーが 「えっ『キーチ』なの!?」

ダンナ「?だめかな」

自分「イヤ、だめじゃないけど、『シュガー』と『Rin』のがよくないかな?!」接骨院の待合室には−。

と自分は思ったのですが、いかがなもんでしょう。娘に話してみたところ



「…だって『キーチ』って両親が通り魔に惨殺されたり、友達の女の子が売春させられてたりとかなかったっけ?今 みんな苦労してる時だから『シュガー』にすれば?」



ダンナにとって私がヤイヤイ言うより説得力があるんですよ、娘のクールな発言は。

やっぱり?てな訳で、2:1。『シュガー』、『リン』『おかめ』をもらっていただきました。ものすごく小っさい事で、それだけの話なのですが、なんか元気にさせてもらった気がします。

ホント我々の仕事って、こんな時どーいう気持ちでやってたらいいのかわからないので。他のいろんな仕事のみなさんがそう思われたと思うのですが、「いいのかなぁ、この未曾有の大惨事に『おかめ』なんか描いてて…」と常々思いつつ、「いやいや一人でも楽しみにしてくれてる読者の方がいるかぎり、がんばって、一瞬でも気晴らしになってくれたら」と自分にハッパかけてやってる者にとって、やはり元気にさせていただきましたよ、今回の一件。

さらにがんばって、もーちょい多くの人に届くマンガが描ければいいなぁー (高いハードルだよ、それ) と、ポジティブシンキングを胸に、明るくなるべく、今日も机に向かっております。



今回は載せるべく写真もなくてすいません。ウチのバニちゃんの写真で和んでいただけたら幸いです。